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神田鶴八鮨ばなし(師岡幸夫著)

神田鶴八鮨ばなし 師岡幸夫著作



 『 お鮨という食べものの、ほかの食品と違った点は、お好きなものをお好きな量だけ注文できるというところが最大の特徴だと思うんです。 』



 なかなか読みごたえのある内容の本。昔堅気の鮨職人として鳴らした、神田神保町・鶴八の初代親方の名著である。こういう本を手に取ると、せめて、現役でつけ場に立たれていたときに店に出向きたかったなぁ~という思いが募る。食べ物の商いは、素材とか料理に至るまでのレシピ云々に有りがちなようにも思えて、実は、やはり人間どおしが介在するもの、だから、人間味が店に大きく影響してくるのは紛れもない事実。



 そのアナログになりかねない曖昧模糊とした部分を極力排除して、合理化する作業が近代化、さらに、まぁ、そうした偏りといえば、偏りを上手に平均化して馴らしていくと、ファストフードとかチェーン店になっていく。その味気なさ、または、無個性化こそが現代というものなのだろうが、ものの魅力と言うか、良し悪しも、時代につれて様変わりしていくものなのだろう。ことに鮨屋という商売は、かなり独特であって、若輩者には近づきがたいものがある。実は、江戸前すしの発生からして、ほんとうは庶民のつまむ程度のファストフードだったのだが、いつのまにやら、格式ばったものへと意識変革が為された。



 いまから20年ぐらい前、気が付くと煙突のある風呂屋が都内から、つぎつぎと姿を消していた。あわてて古い銭湯の空前の灯を追いかけたのだが間に合わないケースも多々あった。同じように、昔堅気の鮨屋も、これからは姿を見無くなる日も近いのではと苦慮している。そんな折に、ようやく読み始めたのが、師岡親方の本だった。職人であるより親方としての振舞いを身に付けされた修行時代、数々の伝説をもった、そのほんの少しだけ垣間見れる職人と言う徒弟制度の旧弊と個性のぶつかりあい。その多くは、いまでは語り草と言うより、昔がたりの域になってしまうのかもしれない。どうでもいいことばかりが、細かく情報化され、共有化できるようになった現代、果たして、昔堅気のなかに、どれだけの真実味を味わうことが可能なのか、わたしにもわからない。

『 いい悪いが非常にはっきりしていて、どなたにも共通する一定の基準があるとすれば、成り立たない鮨屋もいっぱい出てくるはずですから。あすこの鮨屋でなけりゃ食えないよという方がいらっしゃるかと思うと、俺には合わねえという方もいらっしゃる、そこいらへんが、この商売のおもしろいところでしてね。それぞれのお好みに合った鮨屋に、それをよしとするお客様がついてくだすって成り立っていくわけです。 』
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