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民間暦 宮本常一 初版本

「 民間暦 」 : 宮本常一の初版本



 ふつう、文芸書や美術書に到っては、その装丁や紙質などが気になって、やはり初版の状態で、当時、どのように発刊されたのであるのか、そういうことがとやかく煩く言われるものです。宮本常一の書物にあたるのであれば、未来社から刊行されている膨大な著作集を丹念に読んでいけば、それで事足りるのかもしれません。



 もちろん買い揃えるまでもなく、図書館で読んで済ませるのも常道であるはずでしょう。でも、なんとなはなしに、宮本自身に言い知れぬ愛着が沸いてくると、その著作が、いかなる姿で、ひとびとの間に流通していたのか、それを今更のように追いかけてみたくもなります。



 それはビブリオグラフィーでもあり、宮本常一が生きた時間を読み解くクロノロジーにもなるのではないでしょうか、そんな想いがわたしの裡にあります。講談社学術文庫で、現在も読むことができる、《民間暦》の初版本です。



 戦局が、あと少しで、混迷状態へと突入するであろう、一瞬の隙であったのでしょうか、この本の刊行は、昭和17年になっています。当時、紙の無い時節でしょうから、配給制、発行部数は、わずかに3000部。



 六人社という出版社が出していて、民俗選書の一巻として出版され、日本人の精神を鼓舞せんとして、柳田國男が「國史と民族学」などの書名も書籍案内に見受けられます。翌年には、三国書房から、女性叢書という名目で「 家郷の訓 」「 村里を行く 」が出版されている。



 やはり第二次大戦時に書き止められたものとして、これらの諸作品を読み返すと感慨深いものがある。宮本にとっては、私家版による初執筆集やアチックミューぜアムから出された初期の論文を除いて、大衆の目に触れる、はじめて世に問うたものであることには変わりないだろう。



 宮本の本が大衆の目に触れるのは、おそらく死後になってからがピークと思われる。大半の著作も50歳を超えてから、執筆され、その評価が定まってくる。ところで、宮本常一、当時、35歳、初の単行本出版が、この「 民間暦 」になる。



 筆致や語り口は、宮本ならではの、柔らかさがあり、それは、最晩年の「塩の道 」まで変わることの無いキャラクターであったと思うが、柳田國男への配慮が随所に伺われ、初々しさと生真面目さによる堅さが交錯した文面を形作っている。



 本論は、年中行事に関しての総論であるが、恩師でもある柳田國男の「 民間暦小考 」や折口信夫による先駆的な名作=「 年中行事 」など先人の足跡を踏まえたうえで、宮本らしいアプローチで語っている。
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