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ロバート・フォーチュンと中国茶プラントハンティング

ロバート・フォーチュンと中国茶プラントハンティング

 お茶というのは体よく嗜好品であるとともに、実質のところ換金作物であり、また世界のなかで流通可能な経済作物である。お茶を取り巻く、取引の側面には、国内外を問わずして、しばしば、こうした国家財政を担う覇権の歴史が伴い、その背後には主権を掛けた大舞台での駆け引き、つまりは地政学的なやり取り、畢竟、独立戦争がある。



 ロバートフォーチュン、、言わずと知れた『幕末日本探訪記』の著作があって親しまれ、のんびりと幕末日本を観察し、物見遊山で得た光景をしたためた随筆として認知されているだろう。実際、それはそれとしても正しいが、本来の使命は、世界に冠たる大英帝国の旗印のもと、お国のため秘密裏に植物資源に関する情報を持ち帰ることをミッションとした名うてのプラントハンターであった。



 この本は、そうした産業スパイであり、また植物学者として、アヘン戦争の最中、中国本土内部へ潜入を試みて、茶の苗木と茶のタネをインド大陸へ移送することを目指していたひとりの男、ロバート・フォーチュン=紅茶スパイ(邦題)の物語、ある意味、冒険活劇である。



 中国が対外的に極秘にしてきた茶の栽培と製法、そしてなんら事実に基づくことなく議論された18世紀までは、あのリンネさえ、緑茶と紅茶が植物的な違いからだろうという結論を下していた暗黒の時代。フォーチュンは東インド会社の管轄、自国下にあったインド亜大陸において茶樹の栽培と紅茶の輸出という夢に向けてプラントハンティングの実施のため数度のトライ(渡来)を続けていた。



 時代背景や登場人物こそノンフィクションではありますが、肝心な焦点では文献の欠落が存在し、事実関係の裏は取れていない箇所も多く、流れは想像にまかせるとしても専門書ではないので、サラッと読み通すには面白い題材です。

 

 貿易、政治、パワーバランス、さまざまな障壁や航海上のトラブル、妨害等々があるなかで、有益植物をイギリスへ紹介してきた彼自身の功績は大である。また、お茶に関しての詳細な記述は、当時の精細な情報と必ずしもリンクしておらず曖昧で、むしろ本書が上梓された=2010年当時のベタな言説も、つじつまあわせのごとく縫い合わせて書き上げられているので、時系列的に大雑把な流れを把握するに留まらざるを得ない。



 大航海時代にスパイス等で荒稼ぎをして覇権を握ったヨーロッパ列強の大英帝国が、その威光を振りかざしながら、謎の大国=中国へ近づき、アヘンで手なずけ混乱のうち、茶という格好の資源を得て、自らの手で栄光を取り戻そうともがき続ける、そんな記録のひとコマである。



 結果、アッサムでは野生の茶樹が発見され、それと並行して、フォーチュンが苦慮して持ち帰ったであろう中国からの茶のタネと苗が、どこかの時点で、たぶん1850年代のいずれかに合体して、やがて紅茶産業が成り立つよう道筋を敷くことにつながっていくのである。大変革は、いつの時代も壮大な夢と挫折、そして、ひたむきな努力の継続のうちにあります。

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福建省 しょう平水仙茶または水仙茶餅、紙包茶

福建省 しょうへい水仙茶

~または水仙茶餅、紙包茶




 このお茶は、福建省・しょうへい市で伝統的に作られているという珍しい青茶に分類される四角に緩く固められたお茶です。しょうへい平水仙は、木の枠型に嵌めて成型されます。その後、紙に包まれた形状にて出荷。



 印象としては、鉄観音系ではまったくなく、どちらかといえば発酵度合の弱い単叢系統の青茶に似通って香水のようなフラワリー、花の香り高く、岩茶ほどの奥行きはありませんが、勢いが強くガツンとくるインパクトはあります。雲南省の生茶にありがちな苦味などはまったくなく、香水を飲んでるかのような美しさ。

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景邁山の桑寄生あるいは蟹脚=ヒノキバヤドリギ

景邁山の桑寄生あるいは蟹脚について

半寄生植物であるヒノキバヤドリギ


△ 上記写真は小笠原植物誌(HP)さまより転載させていただいております。 



 雲南省に”ヤドリギのお茶”がある、、という話を度々聞いたことがあったのだが、実際に飲んでみて、その正体が何なのか、とても気になっていたので、神農がどうとかこうとかの伝説とかではなく、きちんと植物学的に調べてみた。



 これは、雲南省の景邁山、プーアル茶の古木に付いていると言われる、蟹脚とよばれるヤドリギ(漢名=桑寄生)を乾燥したもの。寄生植物だが葉緑素もあるので光合成をしているから半寄生植物と分類される。蟹脚と呼ばれるのが乾燥品、それをお茶のようにして水から数分間煮出して飲んでみたときのもの。



 水色的には、やや黄色がかった色合いで時間を経ても濃くはならない。匂いは独特で、、強いて例えれば、カモミールティーに近いが、実際にはネマガリタケとか青菜など煮たときのアクのムッと来る匂い、また、あるいは青ゴザのような匂い。味は推して知るべしであるが、苦味のなかにも、ほんのり甘味で、あまり似た種類のものがなく、表現するに難しい。美味しいのか否かと言われれば、飲み物として考えるなら不味い。漢方薬とすれば効きそうな気もするが。



植物として生育している形はスギナ、マツバランとかアッケシソウみたいである。ヤドリギでもいろんな種類があって、欅の大木で見かけるような欧州でクリスマスの象徴とされるヤドリギとは違って外観も小さい。蟹脚と名の付くものは物珍しさから高値で売買されているようだが、プーアル生餅茶に混ぜて云々の謳い文句の付いたものはまことしやかには信じがたく胡散臭いので止めておいた方が無難であろう。(きちんとヤドリギが目視として素材の認識できるものなら真贋が叶うが謳ったまでは宣伝文句の範疇也。)



 漢方薬として単体で飲むには味気ない感じで、むしろ雰囲気だけでも雲南省の生茶プーアルなどに自分で少量混ぜて飲んでみると気分だけ稀少感が増すというぐらいだ。似たような青草の香りのする生茶=産地・氷島茶との相性が好いと思う。蟹脚のミックス相手としては巌茶との相性もよい。



 飲み方としては、蟹脚を2~3g、水200mlで煮出しながら調整、1回煮出したら、もう一度、水を足しつつ煮出す、それで3セットぐらいは十分に飲める。2回目の抽出が飲み頃。



 ヒノキバヤドリギはツバキ科の植物に寄生するヤドリギで日本国内でも発見されています。ふつうのヤドリギは果実を鳥が排泄し媒介していきますが、これは果実が熟すると自身で果皮が破けて種子が周囲に飛び散り、粘着質ゆえに宿主である木に新たに発芽するとの生育環境があります。



 桑寄生(そうきせい)とは一般的に漢方薬の名称、ビャクダン科ヤドリギ、アカミヤドリギ、オオヤドリギの葉を付けた茎ごと乾燥した生薬。成分としてオレアノール酸、ベータ―アミリン、アビクラリン、イノシトール、クエルセチン、ルペオール、イノシン酸などを含む。

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淡島寒月~梵雲庵雑話のことなど(加筆・改稿)

淡島寒月~ある数奇なる趣味人

梵雲庵雑話のことなど、、、弘福寺にて想ふ
  『梵雲庵雑話』は、岩波文庫になってもいるが、その作者である《淡島寒月》について、詳しく知っている人は少ないかもしれない。彼は、西鶴本の蒐集家であって、その本の紹介から、幸田露伴、内田魯庵、斉藤緑雨などが活躍していた明治文壇とのつながりを持ち、彼らに影響を及ぼしたと目されている。



 ようはサークル活動、あるいはサロン、上記の文人墨客たちを、、《梵雲庵》と称した、向島にある《弘福寺境内》の自宅に招き入れ、彼らは、他に並びうるものない風流人である寒月の江戸趣味の世界を堪能したに違いない。

 

 西鶴と寒月の接点は、その生き方の根底に《浮世の悟り》といった”暗黙の悟り済ました虚心坦懐にある”のではないだろうか?



 寒月は晩年、関東大震災で、蒐集していた多くの器物(玩具蒐集:彼は今で言うところの部類のコレクターであった。)を塵芥に帰するが、それでもなお70歳で亡くなるまで、趣味人としての王道を貫き通した。その稀有な生き方は、まさに尊敬に値する。趣味人たるものの鏡である。わたしが長年、人生の師と仰ぐゆえんである。

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茶の世界史 ビクトリアス・ホーネガー著(白水社)

茶の世界史 ビクトリアス・ホーネガー著(白水社刊)



 原題は、リキッド・ジェイド。”流れる翡翠”とでも訳そうか、緑色した葉っぱ=茶は、やがて中国の妙薬から、世界中で愛され普及した飲み物として、経済的・政治的に流動的なものとして、そのつどのパワーバランスと存在価値を示すことになる。



 お茶に関しての、通史などというものは、これまでにも存在し得ない、なぜなら、あまりに扱うべき対象と内容が多岐に渉るためである。それに反して、お茶と接点を有した場面での、物語は、多く語られることが多い。それも、単にエピソードを歴史的事実と紐付けしたに過ぎない、謂わば、お茶を濁す程度の物語である。



 まともに”お茶”に相対するには、かなりの労力を有する。そこには、植物としてのチャ樹があり、経済作物としての農産物であるお茶があり、歴史のページに見え隠れする政治的なお茶があり、それらは既にオモテであって裏でもある。また趣味人、嗜好品としてのお茶も併存して存在しているからタチが悪い。それらの視点を多角的に解き明かす手間は、非常に難を要する。



 いやむしろ細かく考える前に、まず、お茶を一服となる。おおよそ、お茶とは、それ自体を解き明かす作業から離れて、味わうことの中に、お茶の本質を求める事こそ、真実を語らせるものであると、思い到る。そうして、専門家たちが押し黙ったなかで、お茶の通史について書いてみようなどと言う、奇得な方々が現われる。この本もまた、アメリカ人女史の労作であって、しばしば細かな内容には精査を要するものも多いように思える。

 本書が発刊された2010年、もう1冊同じようなテーマを持った、”お茶の歴史 ヴィクター・H・メア(河出書房新社刊)”が上梓されました。やはり同じく、日本版で300ページを越した大著で、読み応え有る資料です。

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Author:momoneko0725
とうきょうの美味しい食べ物や東日本にある温泉地の紹介です。

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